海炭市叙景 kaitanshi-jokei

イントロダクション

あの時間に戻ることはできない…。村上春樹らと並び評されながら不遇に終わった佐藤泰志の幻の小説が、熊切和嘉監督によって、ついに映画化!

佐藤泰志の幻の傑作が、ついに映画化されます。村上春樹、中上健次らと並び評されながら、文学賞にめぐまれず、90年に自らの命を絶った不遇の小説家・佐藤泰志。

『海炭市叙景』は、彼の故郷である函館をモデルにした“海炭市”を舞台に、そこに生きる人々の姿を描き出す未完の連作短編小説です。監督は、やはり北海道出身の熊切和嘉監督。
熊切監督は、遺された18の短編小説の中から、5つの短編を選び、脚本の宇治田隆史とともにモザイクを組み合わせるように、“海炭市”とそこに生きる人々の姿を浮かび上がらせました。

ここに描かれた登場人物の姿は、決して特別なものではありません。みな、ささやかではあるけれども、“幸福な時間”を失ってしまった後に、失ったものの大きさに耐えながら、戻ることもできず、それでも日々を生きていかなければならないのです。“海炭市”とは、特定のどの町でもありません。『海炭市叙景』に描かれたその冬の出来事は、地方都市に生きる人々の物語なのかもしれません。佐藤泰志がそうであったように、遠くから故郷を想う傑作の誕生です。

小説のモデルとなった函館市でおこなわれた撮影。谷村美月、加瀬亮、南果歩、小林薫、ジム・オルーク…スタッフ・キャストと函館市の皆さんとの奇跡のコラボレーション

映画『海炭市叙景』は、佐藤泰志の故郷であり、“海炭市”のモデルとなった、函館の市民の皆さんの手によって企画され、町の人々の多大な協力のもとに冬の函館で撮影されました。

また、この企画に賛同した谷村美月、竹原ピストル、加瀬亮、山中崇、あがた森魚、伊藤裕子、大森立嗣、村上淳、三浦誠己、南果歩、小林薫など、日本映画を支えるキャストが出演。その他、メインキャストを含め数多くの登場人物をオーディションで選ばれた地元・函館の皆さんが演じています。

それは、東京から参加したスタッフ・キャストと、函館に生きる皆さんとのコラボレーションによって生まれた作品だと言っても過言ではありません。そして、この映画のエンドクレジットには、この映画を様々なかたちで支えてくださった数多くの皆さんの名前がクレジットされることとなりました。

また、音楽をジム・オルークが担当。すべての楽器を自ら演奏し、バラバラだったそれぞれのテーマが、ひとつの曲に紡がれていく音楽は、海炭市に生きる人々を優しく包み込むように冬の町に響きます。

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